第10章
発見(その2)



二人は同時にため息をついた。何故なら・・・

理奈「あんたの弱点って・・・難しいわね・・・」

結城「・・・」

理奈「バッティングって普通前足を踏み込んで打つんだけどあんたの場合は・・・」

そう言うと理奈はボールを持ち、投球モーションに入った。

(ヒュ!)

理奈はストレートを投げた。理奈の120`ストレートがやや内角低めに入ってくる。

結城もストレートを打とうとステップする。タイミングも合っている。結城のパワーなら軽くスタンドインだろう。だが・・・

(カキン・・・)

その音は明らかに詰まった様な音だった。打球はピッチャーマウンド上空。記録はピッチャーフライ。

理奈は打球を確認し落下してくるボールをキャッチした。

(パシ)

結城「・・・」

理奈「あんたの場合、ステップした後にバットを引いてるの。つまり上半身と下半身がバラバラ。だからパワーが伝わりにくいし

その上バット引いて打ってるから外角ならまだしも内角は振り遅れてつまっちゃうわけ」

結城「理奈・・・」

理奈「何?」

結城「お前・・・主役の俺より長く話をしてないか?」

理奈は当然怒った。町中に響き渡るような大声で怒鳴った。

理奈「馬鹿!私はまだ脇役の設定なのよ!多少長く話をしたっていいじゃない!」

結城「設定ってなんだよ」

理奈「設定って・・・とにかく!あんたの弱点は上半身と下半身がバラバラなの!あんまり言ってると手伝わないわよ!」

まだ脇役・・・この言葉が気になるが気にしない事にする。

結城「ところで修正方法は?」

理奈はうなってしまった。しまいには一休さんみたいな事までし始めた。そして理奈がゆっくりと口を開く。

理奈「あるよ。けど・・・」

結城「・・・けど?」

理奈「あんまりおすすめできないなぁ・・・」

理奈は迷っている様子だ。

結城「とりあえず・・・言ってみろ」

理奈「打法を変えてみるのよ」

結城はそれが何故おすすめできないのかと思った。

結城「何故?」

理奈「だって結城と一緒の打法になってほしくないんだもん」

結城「他にもあるだろうが」

だが、理奈はさらに困った表情を見せた。

理奈「私・・・振り子とノーマル以外知らない」

おすすめできない・・・というよりそれらしか知らないということが恥ずかしいから言わなかっただけのような気がした。

仕方がないので結城は振り子、ノーマルといった打法を思い出していった。そして・・・

結城「なぁ・・・」

理奈「?」

結城「いや、やっぱいい」

理奈「?」

結城は思い出深いある打法を思い出した。辛い過去と一緒に・・・







夏の大会までそんなに日がない。だが六月三十日、事件は起きた。




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