第13章
VS 浅瀬川商業





7月12日、近くの河原。そこに、男女二人がバットとグローブを持って野球の練習をしていた。女がピッチャー、男がバッターといった感じだ。

(ギィィィィン!)

理奈「あ!

理奈が後ろを振り向いた。打球はレフト方向に伸びていき、音を立てて水の中へと消えた。

結城「結構いったな」

理奈「もぅ、勘弁して・・・」

結城「10球しか投げてないのにか?」

理奈「少しはピッチャーの気持ち考えなさいよ!10本中7本がホームランよ!そりゃ凹むわよ!」

結城「あ・・・悪い」

結城は、理奈に謝った。だが、理奈は感じた。本当は悪いとまったく思ってないと。

理奈「まぁ・・・いいわ。でも、本当は使いたくなかったんでしょ?いいの?」

結城は即答する。

「構わない」と。

大会は明日。明日も快晴らしい。ああ、暑くなりそうだと思う結城だった。







7月12日、鳴門球場で熱い大会が始まった。神城は7月13日、いわば今日試合である。二回戦進出をかけて浅瀬川商業と対決するのだ。

部員達は初めての公式戦に緊張の色は隠せなかった。

篠原「相手は浅瀬川商業か・・・」

西条「勝てるかな〜?」

随分と弱気な西条にカツを入れる由利。

由利「勝てるかな〜?、じゃなくて勝つの!

3人が話をしている時に一塁側の席から大きな声が聞こえた。あおいは何事かと思い、見てみるとそこには・・・

あおい「・・・うちの女子生徒?しかも大勢・・・」

そう、神城の女子生徒、しかもスタンドの椅子が半分以上彼女達で埋まっているぐらいの大人数である。まるで決勝戦のような騒がしさだ。

そのうち何人かが大きな旗を掲げている。その大きな旗には「FIGHT!神城!結城LOVE!BY 結城ファンクラブ」と書かれていた。

他にも笹田LOVEなどと書かれていた。あおいはファンクラブについて結城に尋ねる。

あおい「結城君・・・ファンクラブあったの知ってた?」

結城は必死で首を横に振り否定した。

佐々木「初登場なのにもてはるなぁ、笹田はん」

笹田「勘弁してくれ・・・」







両校のノックも終わり試合がもう始まる直前だ。

高橋「じゃあ、みんな並んで」

そして・・・

審判「両校整列!

高橋「行くよ!

両校の部員達がホームベース近くに走り寄ってくる。

審判「両校、互いに礼!

全「お願いします!

両校の選手のあいさつが球場に響き渡る。神城野球部の初の公式戦が始まったのだ。

高橋「みんな!初勝利を信じて!神城野球部FIGHT!

全「おおー!


神城(先攻)

一番 黒崎  センター
二番 高橋  セカンド
三番 笹田  キャッチャー
四番 結城  サード
五番 一条  ライト
六番 佐々木 ファースト
七番 篠原  ショート
八番 川相一 レフト
九番 西条  ピッチャー


浅瀬川(後攻)

一番 草野 ライト
二番 三輪 ファースト
三番 藤原 ショート
四番 直井 サード
五番 升  キャッチャー
六番 増川 センター
七番 中居 レフト
八番 木村 ピッチャー
九番 草薙 セカンド


*「一回の表、神城高校の攻撃は、一番 センター 黒崎君」

審判「プレイボール!

審判の大きな声がし、試合開始の音が鳴る。

黒崎「緊張すんな〜」

木村「(一年ごときにいきなり本気でいきたくない)」

升「(じゃあ初めは肩慣らしにこれだけでいくか?)」

升はサインを出す。木村は二回ほど頷いた。木村はワインドアップオーバースローから第1球目を投げた。

外角ギリギリに入ってくる。黒崎のバットはボールに掠ることなく空しく空を切った。

審判「ストライク!」

篠原「は、」

西条「速い!

バックスクリーンの球速表示には137`と表示されている。

升「OK、ナイスボール」

黒崎「は、はえ〜」

西条「・・・浅瀬川商業って・・・ひょっとして強いのか?」

誰に言うまでもなく一人で呟く西条。だが、あいはそれを聞き逃さなかった。

あい「去年・・・ベスト8まで食い込んだ・・・らしいです」

西条「え?・・・ええ!?」

西条は思わず大きな声を出した。

2球目、高めのストレート。明らかに外れていたが、判定はストライク。黒崎はボール球に手を出したのだ。

升「(こりゃ簡単に打ちとれるな)」

ベンチも今の黒崎の空振りでかなり騒がしい。

篠原「おーい!今のはボール球だ!」

西条「よくボールを見るんだ!」

他の人達も同じ様な事を叫んでいる。

黒崎「(今の・・・ボール球だったのか)」

黒崎は言われて今初めて気付いたのだ。

結城「(川崎だっけ?あんなボール球を振るということは相当速さに撹乱されている。三振確定だな・・・)」

審判「ストライク!バッターアウト!」

黒崎は内角高めのストレートを空振ぶった。結城の勘が当たり、黒崎は三球三振で終わった。

黒崎「は、速い・・・」

黒崎はただただ驚くしかなかった。

*「二番 セカンド 高橋君」

高橋が打席に入る。

升「(小さいな・・・中学生の間違いじゃないのか)」

そんな事を思いながら升はキャッチャーミットを構えた。

高橋「(ううう打てるかな?)」

表情にはでてないが内心ではかなり緊張というより動揺していた。だが、高橋はいつもと違い、バットを肩口に置いて構えた。

結城「なんか妙だ・・・」




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