第8章
理奈の観察力



ああ・・・今日は暑いな。そういや、今日、ニュースで最高気温25℃とか言ってた気がする。だから暑いのか、と長々と思う結城であった。

あおい「なにボーとしてんのよ」

結城「いや、今日は暑いなぁと思って」

高橋「確かにそうだね」

そこへ高橋が会話に参加するように反応した。やっぱり3人だけで練習は難しいと思った。

それに3人はユニフォームではなく制服である。できてもせいぜい素振りと投げ込みぐらいだろう。

結城「(弱点・・・か)」

その時だった。

理奈「尚史〜!

どこかで聞き覚えのある声が聞こえた。・・・理奈だ。

結城「何しにきたんだ?」

理奈「何しにってあんたのバット持ってきたのよ。」

結城「バットならあるけど」

理奈「ああ!それは!

結城は慌ててバットを確かめた。バットの根元には軟式用と書かれていた。

結城「・・・」

理奈「・・・」

そのバットは見事なまでにへこんでいた。

あおい「・・・この娘は?」

二人の静寂を破るようにあおいが尋ねた。

結城「・・・俺の親戚」

理奈「・・・川上理奈です」

バットもへこんだが同時に二人もへこんでしまったようだ。そしてまた二人に静寂が訪れた。

あおい「・・・」

それにつられるようにあおいにも静寂が訪れた。だが、理奈が何か思い出したかのように突然口を開く。

理奈「あ、そうだ

高橋「どうしたの?」

理奈「いえ、ここに来たのはバットを渡しに来ただけじゃないんです」

結城「今更バットを渡しに来・・・」

その先を言おうとしたところであおいから肘鉄を食らい結城はその場でうずくまってしまった。

理奈「たまに練習試合を見に来てるのですが、惜しいなぁと思う事があるのですよ」

あおい「例えば?」

理奈「球は速いけど四球を連発して押しだしが恐いからボールを置きにいっちゃう人

あおい「・・・」

理奈「いいとこ振ってるのにスイングが遅いからすぐフライになる人

高橋「僕の事だ」

理奈「ストレートがくるとすごいスイングするけど変化球がくるとポンッと尻餅ついちゃう人

結城「ハァ・・・」

結城はため息をついた。まさか、親戚の口から自分の弱点を伝えられるとは思わなかったからだ。

あおい「・・・野球やってた?」

理奈「過去形じゃなくて現在進行形ですね」

そこで高橋がゆっくりと口を開いた。

高橋「その弱点を直すにはどうしたらいいのかな?」

理奈「そうですね・・・」

理奈は二人の修正点・・・というより弱点克服法を考えた。

結城にはバットを弁償しないと考えないと言った。

結城「・・・ハァ」

今日はため息がよく出る、そう思う結城だった。




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