特報



















海がよく見えるマンションだった。そこが僕の家。15年間暮らしてきた、僕の家。

そこから見える海は都会のヘドロでどす黒く濁っていて、お世辞にも綺麗とは言いがたいものだった。

それでもそこから見える水平線へ沈んでいく夕日はとても綺麗で、僕はそれを見るのが大好きだった。









僕には家族が居た。母さんと妹が1人。父さんのことは・・・あまり話したくない。

そんな我が家だった。そこで暮らした15年間はとても楽しくて、とても輝いていて・・・



















ボールが僕の頭上を遥かに越えて飛んでいった。僕はそれを必死に追いかける。

それが僕の仕事だったからだ。数ヶ月前からずっとこんなことをしている。それが日課だった。


「おい、球拾い、遅いぞ」

「はい、すみません!」


それでもそれが僕に求められていたことだと知っていたから、僕はずっとそれを行ってきた。

いつかきっと表舞台に立つときが来る、自分にもそんなときが来る。そう信じていた。



















毎日へとへとになるまで球拾いをして、家に帰る。それが僕の日常だった。

今日もそんな日常の1日になるはずだった。僕は夕暮れの、もう少し夕日が沈んでしまった海沿いの道を歩く。

海の方を見るとわずかに顔をのぞかせた太陽が少しまぶしかった。

家まであと数十メートル、空を見上げてみる。1番星がキラキラと頭上で輝いていた。

僕はそれを見てほっとする。今日も1日が終わったんだと僕に告げている様だった。









家のドアをガチャリと開ける。今日も、そこには何一つ変わらない日常が広がっているはずだった。



















暑い夏の日、僕はもう1度空を見上げた。頭上から照らす太陽がじりじりと肌を焼いていた。

空っぽの毎日、空っぽの日常。あの日からすべては変わってしまった。

僕の世界は、僕の信じていた世界はあんなにも脆く崩れさってしまうものだったのか。









僕はいつものように海を見つめた。その海は蒼く深く澄んでいて、まるで宝石のように輝いていた。

・・・僕の知らない海、知らない世界、知らない僕。それがそこにはあった。

僕は・・・こんなもの要らない。こんな世界になってしまったのはいったい誰のせい?

間違っていたのは・・・誰?僕はいつかその答えにたどり着けるだろうか。僕は・・・



















―――――この海の、向こうまで   Coming Soon




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